ゼロサム化する日本

NISAの恒久化が話題になっていますね。

www.nikkei.com

とても良い事だと思います。

ただ、同時に巻き起こっているのが「富裕層への優遇」批判です。

いわゆる「1億円の壁」問題ですね。

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最近、この「富裕層批判」をよく聞きませんか?

また、「サブスク医療批判」を始め「高齢者優遇批判」も目立ちますよね。

なぜ、こうも批判ばかりになってしまったのでしょうか。

これには、理由があります。

今日は、これについて考えてみましょう。

富裕層批判はなぜ起こる?

「1億円の壁」問題は、フローの話

株式の譲渡益は、分離課税です。

つまり、どれだけ儲けようと税率は一定。 

対して、給与所得等は累進課税です。

稼げば稼ぐほど、税率は上がる。

そして、総所得が1億円を超えるような場合は、たいてい株式で大儲けした時だよね、

必然的に、総所得に対する税率は逓減していくよね。

これが、いわゆる「1億円の壁」問題です。

つまり、所得=フローのお話です。

資産=ストックの話ではない!

という事です。

なぜこんなことを強調するかというと、私は「1億円の壁」問題が、「フロー」から「ストック」にすり替えられるんじゃないかと疑っているからです。

私はFIREした暁には、住民税非課税世帯として生活しようと考えています。

そのため、「ストック」に批判の目が集まることは、大変都合が悪いのです。

そんなバカな。フローとストックの違いくらい、みんなちゃんとわかってるよ。

いやいや、甘いですね。

前科があります。

内部留保を賃上げに」論のおかしさ

内部留保を「賃上げ」や「設備投資」に回せ!

内部留保に課税せよ!

安倍政権のころから、しきりに叫ばれるようになりましたよね。

jp.reuters.com

言うまでもなく、「労働者の賃金=人件費」は「フロー(PL)」の話です。

なぜここで、内部留保という「ストック(BS)」の話が出てくるのか。

内部留保から労賃へ」ということは「日本企業は決算を赤字にしろ」と言っているのと同義です。

そして何より、内部留保(利益剰余金)は一円残らず株主に帰属します。

負債が、債権者に帰属する価値であるのと同じ事です。

内部留保を賃上げに回せ」などど言う主張は、盗人猛々しいものなのです。

こんな主張がまかり通りならば、「PER」も「益回り」も「ROE」も、あらゆるバリュエーション指標は意味をなさなくなります。

EPSのすべてが「配当金」や「再投資による企業価値向上」という形で、最終的には株主に還元される、という確信があってこそ、株式投資は成り立つのですから。

富裕層批判はポピュリズム

これでよく「バイ・マイ・アベノミクス」だの「インベスト・イン・キシダ」だの言えたもんです。

もちろん、政界の上層部がこんな知識を持っていないはずがありません。

確信犯でしょう。

これは「内部留保=企業の不当な貯め込み金」という大衆の「印象=俗情」が「政治」と結託した結果である、といえます。

一種のポピュリズムなのです。

ナチ政権誕生時と同じですね。

「ベルサイユ体制」が「内部留保」に、「ユダヤ人」が「富裕層」に代わっただけ。

ナチス」も「ユダヤ人迫害」も、「民主主義」を母体として生まれたことを忘れてはなりません。

大衆の恐ろしさを、そしてそれが政治と結託した時の恐ろしさ(ポピュリズム)を甘く見てはいけません。

1億持ってるやつらは税金払ってねぇんだってなぁ。新聞に書いてあったぜ。FIREかなんか知らねぇが、仕事もしねぇでふざけた奴らだ。あいつらからもっと税金取れよ。

完全に「誤解と偏見」に満ちた思想ですが、誤解だろうが何だろうが、票になるならばそれと結託するのが今の政治=ポピュリズムです。

「資産1億円」は、せいぜいアッパーマス

…とまあ、幾分被害妄想じみた考えを私は持っていたわけですが(笑)

先日、NHKのニュースを見て、一気に心が晴れました。

www.nhk.or.jp

こうした状況を踏まえ、政府・与党は、経済力のある人には応分の負担をしてもらう必要があるとして、来年度の税制改正に向けた議論の中で、給与所得と資産所得をあわせた総所得が著しく高額な場合に、一定の税率をかけて課税する新たな仕組みを検討する方針です。

対象となる総所得の水準については、与党内で5億円や10億円など複数の意見が出ていて、12月3日の自民党税制調査会の幹部会合でも議論されました。

対象となる総所得の水準としては、与党内で5億円や10億円など複数の意見が出ていて…!!?

 

うおおおおおおお!!!

素晴らしいじゃないですか!岸田さん!!

ちゃんとフローの話をしている!

その水準も、5億、10億という「極めて穏当」な金額です。

国税庁によりますと、おととしの総所得が5億円を超えた人は1600人程度、このうち10億円を超えた人は600人余りとなっていて

穏当過ぎて、税収的には、ほぼ無意味といえます(笑)

このクラスの人たちは、当然資産管理法人を持ってるでしょうしね。

つまり、実際には存在しない「富裕層」を生贄として火あぶりにすると。

このパフォーマンスで大衆の留飲を下げよう、という事ですね。

素晴らしい妙案だと思います。

 

あとは、NISAの投資枠ですね。

年間投資枠240万円、その10年分で生涯投資枠2,400万円。

四人家族で、約1億円の非課税投資枠。

最低でも、これくらいは欲しい所ですね。

またしても「富裕層優遇」との声が出ているようですが、いい加減にしてもらいたいものです。

そもそも、1億円=富裕層のイメージが実態とかけ離れています。

犯人は野村総研のアレでしょうが…

せいぜいがアッパーマスでしょう。

普段使いの日用品を、辛うじて「ブランドもの」にできるかな、という程度です。

例)カゴメ・トマトジュース、サラン・ラップなど。

ポピュリズム・民主主義ゲームの攻略法

投資家人口を拡張しよう

とはいえ。

やはり、絶対数が少なすぎることも事実です。

民主主義という制度においては、数こそ力

今回「富裕層」が狙い撃ちされたのも、結局は人数の問題、票数の問題でしょう。

このような政治リスクを避けるためにも、投資家人口のすそ野拡大は重要です。

特に「本当の意味での中間層」である「資産1億~5億」層を増やさねばなりません。

そのためには、ゼロサム化、いやマイナスサム化している日本ではなく、投資を通じて海外から「価値」を得ていくしかないでしょう。

その意味でも、NISAの恒久化は意義ある事だと思います。

 

さて。

民主主義を「攻略」する上で、他にも見るべきものがいくつかあります。

年齢別人口分布を見よう

まずは人口ピラミッドです。

これは、私が前期老年人口入りする2045年の予想図。

見ての通り、超強力な布陣です。

団塊ジュニア世代が突出しており、その少し下の年代である私を含めた「ロスト・ジェネレーション」が一大勢力を誇っています。

正に大票田。

今以上に、強力なシルバー民主主義となるでしょう。

遠慮はいりません。

我々ロスジェネは、生まれながらに厳しい受験戦争、就職戦線に晒されてきたのです。

ようやくの「還元フェーズ」です。

しっかり享受いたしましょう。

都市圏ー地方圏の人口推計を見よう

では次に、都市圏と地方圏の人口推移を見てみましょう。

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東京を含む南関東がシェアを伸ばし、近畿、中部といった大都市近郊がシェアを維持しています。

対して、地方圏は軒並み大きくシェアを落としています。

東北など、ひどい有様ですね。

つまり、都市圏の政治力が強まり、相対的に地方圏は弱まる、ということです。

おそらく、地方切り捨ての議論が進むことでしょう。

俺たちの稼いだ金が、田舎に吸い取られているぞ!地方交付税交付金を廃止しろ!

もう、目に見えるかのようですね。

しかし、地方にも反撃のチャンスはあります。

一票の格差、つまり人口当たり議員数の多さを活用する。

②都市部は野党支持者が多い(京都の共産党が典型)

対して地方は、伝統的に自民支持率が高い保守王国であることが多い(特に北陸)。従って、自民党が政権にいる限り、相対的に地方重視の政策は続く。

 

この二点です。

これを突破口にするのです。

我々地方人は、きっちりと自民党議員を政界に送り込みましょう。

全ては、日本のゼロサム化が原因

・富裕層批判

・高齢者優遇批判(所謂「サブスク医療」など)

・地方優遇批判

これらは今後、ますます激しくなるでしょう、

なぜならば、日本全体がゼロサム化、マイナスサム化していくからです。

限られたパイの奪い合い。

自分が「より豊かに」なるには、他の誰かを「より貧しく」させねばならない。

これがゼロサム社会です。

これを避けるには、「労働人口の減少」以上に「生産性」を向上させなければなりません。

労働人口減少」と「生産性向上」の綱引き。

これの結果次第では、ゼロサムどころかマイナスサム社会になるでしょう。

そして、これに対する有力な「保険」となり得るのが、海外株投資、ということです。

海外の労働者から搾取する。

そして「数の力」で民主主義を制する。

これが、ゼロサム日本における必勝法です。