彼の名を、Mさんとしましょうか。
Mさんは、三十代後半(…でしたよね?)の男性です。
今月いっぱいで郵便局を退社し、見事FIRE(?)を達成されることとなりました。
彼は私と違い、FX(海外)の短期トレーダーです。
保有資産額は、米ドルだけで約430万ドル(約5億8,000万円)^^;
筆者など、足元にも及ばぬ金額です(笑)
堂々たる「超富裕層」というわけですね。
FIREに(?)を付しているのは、Mさん自身にその自覚がないからです。
筆者から見ても、それは感じます。
郵便局の仕事自体も、彼にとっては「ゲームプレイ」だったんですよね。
そもそも「生活のための労働」ではなかったのです。
ひと通り楽しんだから、次のゲームしよっかな!
…そんな感じですね(笑)
能力値がバグってる
しかし、彼の凄さは「資産額」ではありません。
「三十代後半で6億円」は確かにレアですが、それだけなら「ふ~ん」でしょう。
私自身も、資産額2~3億円程度ならば、フツーにいくと思ってますし。
ただし、達成するのはジジイになってからですが^^;
長期投資家ならば、誰もがそう思っているでしょう。
彼がすごいのは「能力値」です。
これはもう、少し話しただけで分かります。
郵便局には「マニア気質」な人間が多いのですが、彼はどんなマニアックな話題でも平然と議論に加わってきます。
ちなみに私は、中学時代から小遣いで「赤旗」を愛読するほどの「共産趣味者(※)」なのですが、そんな私の土俵に上ったうえで、私を投げ飛ばしてくるのです(笑)
※あくまでも共産主義者の「観察」が趣味なだけで、支持しているわけではありません
「トロツキーの死因」「ルイセンコ農法」から「連合赤軍メンバーの最終学歴(笑)」まで、すべて体系的な知識を持っている。
彼にとっては「一般常識」なのでしょう。
マルクスも、原書(ドイツ語)で全部読んでるそうです。
これで工学部出身ですからね(但し、転学前は京大文学部)。
こんな人間がこの世に存在するとは、と心底たまげました。
ちなみに、郵便局にいる高学歴者は、押しなべて仕事が出来ません(特に旧帝大文系)
私も、東北大出身の班員と長い間仕事をしましたが、それはそれは凄かったです。
大事なものを落とす、失くす、やる気ゼロ、そのくせプライドは高い(笑)
要するに、意識の抽象度が高すぎる(かつ、それを調節できない)のです。
その点、彼は「抽象軸の操作」が上手いんですよね。
だから仕事もできましたし、若手のリーダーとしていろいろな場面で活躍したようです。
彼の名前を検索すると、活躍ぶりが出てきます。
「あなたへのおすすめ(レコメンド機能)」のプロットを開発・販売
彼は学生時代、工学部の仲間二人とともに起業した経験もあります。
アマゾン等、ECサイトで「あなたへのおすすめ」が表示される機能がありますよね?
あれのプロットは、彼らが開発し、売り込んだものです。
2009年にオラクルが買い取り、その後アマゾンが採用。
彼の役割は、プログラムではなく「どの視点に立ってシステムを開発するのか」を構築する事でした。
当時のAI研究者は(というか現在も)、「人間の心」や「認知の在り方」を脳科学等の先端科学で「客観的に」観測しようとしていました。
例えばフロイトの精神分析のように、人間の心は「過去の環境や出来事」に基づく因果律によって決定される(トラウマ等)、という考え方です。
ここで問題になったのは「ある人格」をシミュレートしようとする際、あまりにも膨大なデータが必要になる事です。
かつ、その「出力」も上手くいきませんでした。
実際、「精神分析」に基づく精神病患者への治療では、ヒアリング(入力データ収集)に膨大な時間が掛かる割に、成果が思うように挙がらない、という事態が発生しています。
ここで彼が行ったのは、この「心」の哲学的考察です。
そもそも「心」とは主観的なものではないか。
従って、それは内部から観測することによってしか把握できないのではないか。
このように、考えたのです。
哲学好きの、彼らしいですね(笑)
これをマーケティングに応用すると、どうなるか。
例えば、「21時のトレンディードラマは女性の若年層の視聴が多いから、化粧品のCMを流そう」とする。
これは、群集心理のひな型に基づいて「この人たちは、こう考えるのではないか」と客観的に実証実験しているだけですよね。
これでは、個々の「心」にアプローチすることは難しい。
なぜなら、それは「主観的」なものだから。
では、どうするか。
購買者(主観)が、過去に選択した行為を提示して、次の意思決定行動に判断材料を与えればよい(心の形成に影響を与える)ということですね。
検索履歴、です。
このプロットを売り込んだわけですね。
郵政の「現場」は、それなりに魅力的
そんな凄い人間が、なぜ郵政(しかも現場)なんかに来たのよ?
そう思われるかもしれません。
しかし、郵政の現場には「独特の魅力」があるのも事実なのです。
・チーム(十数人)の長になってしまえば、その範囲内なら裁量が意外と大きい。
ただ、勤務時間を独断で変更した時は、ひどく怒られました^^;
・ムリムラムダが大量にあるため、ちょっとハウツー本をかじって応用するだけで面白いように成果が出る。
・企画職(こっちは最悪)と違い、仮説に対する検証がリアルタイムで観察できる。
・みんなで協力して成果を出せば、すごく気持ちいい「達成感」が味わえる。
こんな感じでしょうか。
ゲームプレイとして捉えれば、確かに面白い職場ではあるのです。
筆者は、稲盛さんのアメーバ経営に感化されて「チーム内ポイント経営制度」とかやってましたね(笑)
チームへの貢献度をポイント化し、毎月個人ごとに「決算」を行うのです。
結果は一覧表にまとめて、実際に人事評価の参考にします(私は1次評価担当)。
・頑張っている人が報われる職場にしたい
・たとえ配達が遅くたって、貢献分野はたくさんある事を伝えたい
・「やらされ感」を脱却し、例え拙くとも「自分で考えて実行する」ことが何よりも大事な事を伝えたい
これが目的でした。
郵政は、人事評価の基準がやたらと定性的なのです。
これを定量化して、きちんと各人の「頑張り」を管理者に示したかった。
班で何人かは乗り気になってくれる子もいて、楽しかったです。
…問題は「面白いのは現場まで」というところです。
管理職に昇進すれば、ひたすら現場の尻ぬぐいをするだけの、地獄のような日々が訪れます。
休日は現場の半分。土日も呼び出し。
そして、給料はクソ安い。
管理職手当はつきますが、幹事局一集部長(局長の一歩手前)でも、わずか8万数千円。
現場配達員なら、超勤その他の手当で15万円は付きます。
更に、局の売れ残り商品(年賀はがき等)は、自腹で買い取り(ボーナスが飛ぶほど)。
各種事故も、隠ぺいする場合は費用等、管理者負担です。
…死んでも嫌ですね。
しかし「楽しく」仕事をするには「前向きに」なる必要があります。
そして「前向きに」やっていると、必ず「昇進」を強要される、というジレンマがある。
断れば、壮絶な「昇進ハラスメント」が待っています。
困難局や遠方局への、たらいまわし人事ですね。
その度に、すべて覚えなおしです。
私もやられました。
ちなみに「後ろ向きに」仕事をしていれば、何十年も同じ局に留まることが出来ます。
同じ区域を配達しているだけで、高い給料を労せずして頂けます。
頑張ったものがバカをみる、という郵政ルールですね(笑)
給与制度も、そのような設計です。
頑張ったものを、徹底的にバカにする給与制度ですね。
最終的に一番得をするのは「何も仕事をしない人」になるのです。
言っておきますが、これは本社を批判しているのではありません。
私は、この給与制度(業績手当)の設計責任者であるH専務(当時)に、この問題を直訴した事があります。
氏は、よくぞ言ってくれた、とむしろ喜んでいました。
そう、本社だって最初から全て分かっているのです。
分かっていても、どうする事も出来ない。
郵政ルール「頑張ったものがバカを見る」は経営陣にも適用されるからです。
お船の会社のあの人は、潰されましたよね。
システム上、「こうなるしかない」のです。
筆者はこれに対抗するため、少々おやんちゃな手段を行使せざるを得ませんでした。
結局、ここから会社との関係が拗れてしまって、今に至っているのです。
ま、結果として目的は達しましたが。
すいません、話が逸れましたねm(_ _)m
彼も「郵政の現場は、次々に降ってくるミッションを捌いていくのが楽しい」といました。
現場に限れば、悪くない職場だと思います。
ご活躍を祈念します
彼はFXのトレードについても、アホな筆者相手に必死に指南しようとしてくれました。
恐らく彼は「自分で利益を上げる」ゲームには飽きてしまって、「アホを調教して、利益を上げさせる」という「縛りプレイ」をしていたんだと思います(笑)
ただ、一流短期トレーダーの「凄み」というものは、言語化できない部分にこそあると思うんですよね。それこそ「主観」です。
あと、私は短期トレードには才能がないのが明らかなんですよね。
調子に乗ってしまうのです。そして、コツコツドカンの繰り返しです。
従って、お気持ちは大変ありがたかったのですが、私を調教するのはお勧めしません(笑)
ただ、散々語り合った抽象話の中に、そのエッセンスは確かに含まれていたように感じます。
短期も長期も、投資も投機も、抽象度を上げていけば結局一致するんですよね。
あの時間は、大変濃密な、そして二度と戻らぬ貴重な時間でした。
今でも、懐かしく思い出されます。
ちなみに、私がこのブログを始めたのも、職場で私の抽象話に付き合ってくれる人が居なくなったからです(笑)
欲求不満の解消ですね。
読者の皆様、いつもお付き合い下さり、ありがとうございますm(_ _)m
彼は今後、ブログやSNSで活動されるそうです。
私も、とても楽しみにしています。
始動の際には、当ブログでもお知らせさせて頂きますね。
ご活躍を、祈念しております。