こんばんは!
サイコパスの郵便屋さんです。
高橋洋一氏が、岸田政権の「資産所得倍増計画」及び「貯蓄から投資へ」施策を批判しています。
個人的には…というか株式投資家としては、高橋氏や藤井聡氏は大変都合の良い発言をしてくださるので、大いにご活躍を期待しております(笑)
しかし、今回の動画はどうもいただけませんね。
高橋氏は岸田政権の「貯蓄から投資へ」を次のように批判しています。
①経済学的には「貯蓄」と「投資」は一致するので、「貯蓄から投資へ」なんて意味不明。
②「貯蓄=銀行預金」は最終的に「企業への投資」に回るので、結局「銀行」を経由するか「証券会社」を経由するかの違いだけである。
③従って、岸田首相は「証券会社の肩を持っている」だけ。
このようなロジックです。
これははっきり言って「揚げ足取り」ですね。
いくら岸田政権だからと言って、何でもかんでも批判すればいいわけではありません。
政策ごとの是々非々で見てくべきでしょう。
はっきり言いますが「信者ビジネス」は他所(投資以外の分野)でやっていただきたく思います。
①経済学的には「貯蓄」と「投資」は一致する、とは?
まず①ですが、これはマクロ経済の「貯蓄バランス」論を引っ張り出してきたようですね。
この時点でまずおかしいですよね。
「貯蓄から投資へ」への批判で「貯蓄投資バランス」を持ち出すのが。
そもそも前者と後者では「貯蓄」「投資」の定義が全く違います。
「貯蓄から投資へ」論の言葉の定義
この場合、
「貯蓄」は「銀行預金」
「投資」は「株式や社債への直接投資」
を意味します。
ごく一般的な、直感的に分かり易い定義ですね。
従って「貯蓄から投資へ」とは、
「貯蓄(間接金融)」よりも「投資(直接金融)」の方がリターンが大きいから、みんなもやった方がいいよ!
というだけの事です。
あくまで「家計にとっては、その方が儲かるよ」という単純な話です。
「貯蓄投資バランス」論の言葉の定義
対して「貯蓄投資バランス」における「貯蓄」は、氏も動画で述べている通り
「所得のうち、消費されなかったもの」を意味します。
「銀行預金」はもちろん、「株式投資」「不動産投資」「投資信託」等も、すべて「貯蓄」に含まれます。
そして「投資」とは「生産のうち、消費されなかったもの」を意味します。
具体的には「設備投資」「住宅投資」「在庫投資」ですね。
「在庫投資」とは「売れ残った生産物」等を指します。
どうでしょう。
「貯蓄」「投資」の定義が、それぞれ全く異なりますよね。
そもそも「貯蓄投資バランス」において「貯蓄と投資が一致する」というのは、
「GDPを「分配面」から見ても「支出面」から見ても一致する」と言っているに過ぎません。
支出面:所得(GDP)=消費+投資
分配面:所得(GDP)=消費+貯蓄
同じものを別の角度から見ているだけなので、一致するのは当たり前です。
②「貯蓄=銀行預金」は最終的に「企業への投資」に回る、もおかしい
下図は、日本における貯蓄投資バランスの推移を示してます。
1990年ごろまでは、「家計」の貯蓄過剰が「企業」の貯蓄不足を埋めていますね。
これならば、「預金」は「企業への投資」に回る、と言えます。
しかし、90年以降はこの構図が一変します。
「家計」ばかりか「企業」も貯蓄過剰となり、代わって「政府」が貯蓄不足になっています。
つまり、90年代以降、民間(家計及び企業)の貯蓄過剰が政府の赤字をファイナンスする、という構図になっているのです。
つまり、「預金」が「国債」へと向かい「政府支出」につながっている。
政府支出は社会保障費等の穴埋めへと向かうことになります。
また、「家計」の貯蓄率低下(高齢化、労働所得減少等による)に伴って、「貯蓄過剰」の主体が「企業」になっているのが分かります。
その結果、企業には巨大な貯蓄が「現預金」として滞留しています。
そして、これは言うまでもなく「BPS上昇」という形で「株主の利益」になります。
つまり、企業の資金需要が存在した時代においては「家計」の貯蓄が「預金」を通して「企業融資」に回り、「家計」も相応のリターン(利子)を受け取っていました。
しかし、バブル崩壊以降はこの構図が崩れ、資金が企業内に滞留し、これが株主利益に繋がっている。
再び「家計」が相応のリターンを獲得し、消費を通じて経済を活性化するには、「貯蓄から投資」によって「家計」が「株主」となることが必須だという事です。
③岸田首相は「証券会社の肩を持っている」?
そんなわけありませんね(笑)
言うまでもなく。
ひろゆき氏もそうですが、とかく「信者ビジネス」になったとたん、インフルエンサーの発言が非常に「雑」になる印象があります。
高橋氏についても「信者相手なら適当に岸田をディスっときゃええわい」ぐらいに考えているであろうことがミエミエです。
まあ実際、動画のコメント欄を見る限り、それは正しいようですが(笑)
筆者は個人的には「陰謀論も面白ければOK」と考えています。
マルクス主義がいまだに根強い人気を誇るのは「面白い」からです。
「面白い」とはつまり、「ファクトの選択、解釈に多少偏りがあっても、ロジック・ストーリーに独自性とリアリティがある」ということです。
今回の高橋氏の「貯蓄から投資」批判は、つまらんです。
最近のひろゆき氏も酷いです。
「日本株は、日銀と年金がバブルにしているだけ」
「これを売却しだすと毎日15%安とかになる」
こんな感じの「信者ビジネス」を繰り広げています。
いや、まったくもって面白くない。
Qアノンでも、もう少し面白いのではないでしょうか(知らんけど)
陰謀論も結構ですが、もう少し面白くしてください。
あと、投資分野で変なこと言うのは止めていただきたい。