「貯蓄から投資へ」は全くもって正しい

こんばんは!

サイコパスの郵便屋さんです。

 

高橋洋一氏が、岸田政権の「資産所得倍増計画」及び「貯蓄から投資へ」施策を批判しています。

www.youtube.com

個人的には…というか株式投資家としては、高橋氏や藤井聡氏は大変都合の良い発言をしてくださるので、大いにご活躍を期待しております(笑)

しかし、今回の動画はどうもいただけませんね。

高橋氏は岸田政権の「貯蓄から投資へ」を次のように批判しています。

①経済学的には「貯蓄」と「投資」は一致するので、「貯蓄から投資へ」なんて意味不明。

②「貯蓄=銀行預金」は最終的に「企業への投資」に回るので、結局「銀行」を経由するか「証券会社」を経由するかの違いだけである。

③従って、岸田首相は「証券会社の肩を持っている」だけ。

このようなロジックです。

 

これははっきり言って「揚げ足取り」ですね。

いくら岸田政権だからと言って、何でもかんでも批判すればいいわけではありません。

政策ごとの是々非々で見てくべきでしょう。

はっきり言いますが「信者ビジネス」は他所(投資以外の分野)でやっていただきたく思います。

①経済学的には「貯蓄」と「投資」は一致する、とは?

まず①ですが、これはマクロ経済の「貯蓄バランス」論を引っ張り出してきたようですね。

ja.wikipedia.org

この時点でまずおかしいですよね。

「貯蓄から投資へ」への批判で「貯蓄投資バランス」を持ち出すのが。

そもそも前者と後者では「貯蓄」「投資」の定義が全く違います。

「貯蓄から投資へ」論の言葉の定義

この場合、

「貯蓄」は「銀行預金」

「投資」は「株式や社債への直接投資」

を意味します。

ごく一般的な、直感的に分かり易い定義ですね。

従って「貯蓄から投資へ」とは、

「貯蓄(間接金融)」よりも「投資(直接金融)」の方がリターンが大きいから、みんなもやった方がいいよ!

というだけの事です。

あくまで「家計にとっては、その方が儲かるよ」という単純な話です。

「貯蓄投資バランス」論の言葉の定義

対して「貯蓄投資バランス」における「貯蓄」は、氏も動画で述べている通り

「所得のうち、消費されなかったもの」を意味します。

「銀行預金」はもちろん、「株式投資」「不動産投資」「投資信託」等も、すべて「貯蓄」に含まれます。

そして「投資」とは「生産のうち、消費されなかったもの」を意味します。

具体的には「設備投資」「住宅投資」「在庫投資」ですね。

「在庫投資」とは「売れ残った生産物」等を指します。

 

どうでしょう。

「貯蓄」「投資」の定義が、それぞれ全く異なりますよね。

そもそも「貯蓄投資バランス」において「貯蓄と投資が一致する」というのは、

GDPを「分配面」から見ても「支出面」から見ても一致する」と言っているに過ぎません。

支出面:所得(GDP)=消費+投資

分配面:所得(GDP)=消費+貯蓄

同じものを別の角度から見ているだけなので、一致するのは当たり前です。

②「貯蓄=銀行預金」は最終的に「企業への投資」に回る、もおかしい

下図は、日本における貯蓄投資バランスの推移を示してます。

1990年ごろまでは、「家計」の貯蓄過剰が「企業」の貯蓄不足を埋めていますね。

これならば、「預金」は「企業への投資」に回る、と言えます。

しかし、90年以降はこの構図が一変します。

「家計」ばかりか「企業」も貯蓄過剰となり、代わって「政府」が貯蓄不足になっています。

つまり、90年代以降、民間(家計及び企業)の貯蓄過剰が政府の赤字をファイナンスする、という構図になっているのです。

つまり、「預金」が「国債」へと向かい「政府支出」につながっている。 

政府支出は社会保障費等の穴埋めへと向かうことになります。

 

また、「家計」の貯蓄率低下(高齢化、労働所得減少等による)に伴って、「貯蓄過剰」の主体が「企業」になっているのが分かります。

その結果、企業には巨大な貯蓄が「現預金」として滞留しています。

そして、これは言うまでもなく「BPS上昇」という形で「株主の利益」になります。

つまり、企業の資金需要が存在した時代においては「家計」の貯蓄が「預金」を通して「企業融資」に回り、「家計」も相応のリターン(利子)を受け取っていました。

しかし、バブル崩壊以降はこの構図が崩れ、資金が企業内に滞留し、これが株主利益に繋がっている。

再び「家計」が相応のリターンを獲得し、消費を通じて経済を活性化するには、「貯蓄から投資」によって「家計」が「株主」となることが必須だという事です。

③岸田首相は「証券会社の肩を持っている」?

そんなわけありませんね(笑)

言うまでもなく。

 

ひろゆき氏もそうですが、とかく「信者ビジネス」になったとたん、インフルエンサーの発言が非常に「雑」になる印象があります。

高橋氏についても「信者相手なら適当に岸田をディスっときゃええわい」ぐらいに考えているであろうことがミエミエです。

まあ実際、動画のコメント欄を見る限り、それは正しいようですが(笑)

 

筆者は個人的には「陰謀論も面白ければOK」と考えています。

マルクス主義がいまだに根強い人気を誇るのは「面白い」からです。

前回記事にも書いた「コミンテルン陰謀論」も大変面白い。

「面白い」とはつまり、「ファクトの選択、解釈に多少偏りがあっても、ロジック・ストーリーに独自性とリアリティがある」ということです。

 

今回の高橋氏の「貯蓄から投資」批判は、つまらんです。

最近のひろゆき氏も酷いです。

日本株は、日銀と年金がバブルにしているだけ」

「これを売却しだすと毎日15%安とかになる」

こんな感じの「信者ビジネス」を繰り広げています。

いや、まったくもって面白くない。

Qアノンでも、もう少し面白いのではないでしょうか(知らんけど)

陰謀論も結構ですが、もう少し面白くしてください。

あと、投資分野で変なこと言うのは止めていただきたい。