日本の安全保障の要は「半導体」である

こんばんは!

サイコパスの郵便屋さんです。

 

TSMCはじめ、台湾の半導体投資がすごいことになってますね。

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記事によると「地政学リスク」の高まりが背景としてあるようです。

これだけ半導体工場集積させれば、アメリカも台湾を見捨てられまい

このような思惑があるようです。

流石は台湾ですね。

全くもって正しい「国防政策」だと思います。

アリゾナに建設中のTSMC新工場も、肝心の技術者が集まらず、難航しているようです。

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「米国は、自国での半導体生産を拡大しようとしているが、米国には製造業の人材が既にいない。

台湾製よりも50%もコストが高く数百億ドルの(半導体業界への)補助金では、米国で半導体生産を進めるには、かなり少ない額だ。

520億ドル(約6兆6千億円)の補助金法案、いまだ上下院で法案がまとまらず、可決の見通しすら立っていない。

米国は、もう昔のような(半導体が強い)国に戻ることは不可能だ」と発言。米への不満を露にした。

TSMCの労働条件が非常に過酷で(技術者は勤務時間外も常に「待機」状態)、アメリカ人にとっては耐え難いものだとか。

 

これは台湾、そして我が日本の安全保障にとっても、大変都合の良い展開になりましたね。

台湾の半導体製造、そして日本の製造装置・素材。

防衛産業はじめ、あらゆる産業に不可欠である半導体は、台湾・日本なくして製造不可能だということです。

アメリカ側にとっても、中国に対抗するため、日本の半導体産業を再興させる思惑があるのでしょう。

80~90年代にかけて、少々日本をイジメ過ぎましたからね(笑)

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ま、あのころは「反共の砦」としての日本は用済みでしたからね。

米中対立によって、再び「お役」が回ってきたということです。

今般の「アメリカ公認」ともいえる円安は、そういう思惑も含まれているのではないでしょうか。

 

加えて、半導体設計(ファブレス)分野においても、台湾の存在感は増しています。

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いや、見事ですね!台湾。

我々を中国から守らないと、どうなるかお分かりですね?

これはほとんど脅迫でしょう(笑)

日本も、防衛費のGDP比2%化も大変結構ですが(これもアメリカの「意向」が強そう^^;)、何より半導体産業の育成に力を注ぐべきでしょう。

市場も大変期待しています。

業界最大手で営業利益率も格上の「米アプライドマテリアルズ」がPER15倍。

一方、業界4位の「東京エレクトロン」がPER20.5倍。

この意味を、よく考えるべきでしょう。

 

アメリカは徹頭徹尾「自国にとって損か得か」で行動する国です。

ウクライナが「見捨てられた」のは「アメリカ国内で代替可能」な資源国(小麦)だった面が大きいのでしょう。

同じく、ロシアの原油天然ガスも「代替可能」です。

であれば、ウクライナを「生かさず殺さず」程度に支援し、ロシアを長期戦へと引きずり込んで弱体化させる方が「都合が良い」のでしょう。

まあ、この辺は筆者の想像ですが(笑)

日本は同じ轍を踏むことなく、アメリカの都合のいい国になるべく全力を尽くすべきでしょう。

世界はアメリカを中心とする幕藩体制なのですから。

そして徹底して「損得」で行動するアメリカを「宗主国」とするのは悪い選択ではありません。

日本は「情緒と道徳」で行動しがちな「お人良し国家」だからです。

かつて、日本はそれで何度も失敗してきました。

「情緒と道徳」で行動する日本


歴史的に見ても、日本の国運は「アメリカにとって都合のいい国であるか否か」で決まってきました。

「奇跡の勝利」と言われた日露戦争にしても、

・リーマンブラザーズはじめ、英米による巨額の資金提供(当時、三等国で超ハイリスクの日本国債を引き受ける国・銀行は他に皆無でした)

バルチック艦隊の寄港・補給拒否等、様々な妨害工作

・和平の仲介

など、英米の強力な後ろ盾があってこその勝利でした。

ロシアの南下を妨害するため、日本に「利用価値があった」からです。

 

しかし、この蜜月関係には、早くも1905年にひびが入ります。

アメリカから持ち掛けられた「南満州鉄道共同経営」を拒否したのです。

この背景には、ロシアから賠償金を得られなかった「弱腰の政府」に対する民衆の不満がありました。

日露戦争で、多くの英霊がお国のために散った。

・にも関わらず、ロシアからは賠償金を得られなかった。

・この上、数少ない「戦果」である南満州鉄道の経営権まで半分アメリカに取られては、英霊に申し訳がない!

この「英霊に申し訳ない」という感情は、太平洋戦争に突入する際にも大きな原因になっていますね。

このような、非常に「情緒的」で「道徳的」な感情論に引っ張られ、日本は国運を左右する重大な決定をしてしまったのです。

これ以降、日本はアメリカにとって「都合の悪い国」になっていきます。

「人種差別撤廃提案」によって英米の警戒は増幅


第一次大戦後のパリ講和会議において、日本は「人種差別撤廃提案」を行います。

背景には、移民政策によって海外に渡った日本人が、現地で排斥運動を受けていたことがありました。

しかし、そもそもこの移民は、日本政府が国内の「邪魔者(食い扶持に困った低学歴者や左翼運動家)」を海外へ棄民したことで発生したものです。

「海外に移住すれば、豊かでバラ色の生活が待っている」

このような政府の甘言に釣られた移民たちの中には、作物など育てようがないアマゾンの奥地に「殖民」され、マラリアや飢えで集落ごと全滅した例も多かったそうです。

しかし、中にはハワイやカリフォルニア等で懸命に働き、成功を収める日本人も出てきました。

ー日本人の移民が、我々の仕事を奪い、アメリカ社会を侵食しようとしているー

いわゆる「黄禍論」が巻き起こります。

このような世相にあって「人種差別撤廃提案」など、移民の受け手側の英米にとっては到底受け入れられるものではないでしょう。

また、日本自身にも朝鮮人や台湾人、中国人に対する強い差別感情がありました。

あまりにもリアリティを欠いた、情緒的・道徳的な提案であると言わざるを得ません。

世界のルールは、アングロサクソンが作るのです。

彼らにメリットのない提案など、通るわけがありません。

案の定、この提案は廃案された上、英米に日本への強い警戒感を植え付けました。

「情緒と道徳」に流された日本の、外交上の失策と言えるでしょう。

「情緒と道徳」を共産主義者に利用される


この「情緒と道徳」で国家を動かす日本の性質は、コミンテルン(世界革命を目指す国際共産主義組織)にも見抜かれ、大いに利用されることになります。

ja.wikipedia.org

ソ連のスパイであった尾崎秀実は、近衛内閣のブレーンとして政権中枢まで潜入し、内閣の方針に多大な影響を与えました。

当時コミンテルンは、

・日本と中国(蒋介石率いる国民党)を全面戦争へと導くことで双方を消耗させる。

そのため、中国民衆を扇動して日本人の排斥運動を起こすとともに、日本民衆の反中感情も扇動する。

・さらに日本を南進させることで米英との全面戦争へと導く。

このような方針をもっていました。

尾崎秀実はこれに従い、「朝日新聞」「中央公論」「改造」といった当時の主要メディアで論陣を張ります。

中央公論』9月号で「南京政府論」を発表し、蔣介石国民政府は「半植民地的・半封建的支那の支配層、国民ブルジョワ政権」であり、「軍閥政治」であるとして酷評し、これにこだわるべきでないと主張した。

9月23日付の『改造』臨時増刊号でも、局地的解決も不拡大方針もまったく意味をなさないとして講和・不拡大方針に反対、日中戦争拡大方針を主張した(コミンテルン指令1937年

こうした主張は、当時「暴支膺懲」の標語のもとで盛り上がった反中感情扇動し、翌1938年昭和13年1月16日第一次近衛声明に影響を与え早期和平を目指したトラウトマン工作も打ち切られた。

同年『改造』5月号で「長期抗戦の行方」を発表し、日本国民が与えられている唯一の道は戦いに勝つということだけ、他の方法は絶対に考えられない、日本が中国と始めたこの民族戦争の結末をつけるためには、軍事的能力を発揮して、敵指導部の中枢を殲滅するほかないと主張、

また『中央公論』6月号で発表した「長期戦下の諸問題」でも中国との提携が絶対に必要だとの意見に反対し、敵対勢力が存在する限り、これを完全に打倒するしかない、と主張して、講和条約の締結に反対、長期戦もやむをえずとして徹底抗戦を説いた。

さらに尾崎は、対米英戦争の長期化を目論んで「東亜新秩序」建設を主張します。

米英の圧政に苦しむアジア植民地を日本が「解放」し、「新秩序」を建設せよと扇動すれば、情緒的な日本人は「乗ってくる」と読んだのです。

私の立場から言へば、日本なり、ドイツなりが簡単に崩れ去って英米の全勝に終るのでは甚だ好しくないのであります。

万一かかる場合になった時に英米の全勝に終らしめないためにも、日本は社会的体制の転換を以てソ連支那と結び別の角度から英米に対抗する姿勢を採るべきであると考へました。

此の意味に於て、日本は戦争の始めから、米英に抑圧せられつつある南方諸民族の解放をスローガンとして進むことは大いに意味があると考へたのでありまして、私は従来とても南方民族の自己解放を「東亜新秩序」創建の絶対要件であるといふことをしきりに主張して居りましたのはかかる含みを寵めてのことであります。

日本はこういった共産主義者の扇動に見事に引っ掛かり

・中国の暴動から日本人を救え

・ここで退いては英霊に申し訳がない

・アジアの民衆を英米から解放せよ

このような情緒的スローガンの下、国を破滅させました。

戦時中商工大臣を務め、戦後首相となった岸信介は次のように回想しています。

近衛文麿東條英機の両首相をはじめ、この私まで含めて、支那事変から大東亜戦争を指導した我々は、言うなれば、スターリンと尾崎に踊らされた操り人形だったということになる。私は東京裁判A級戦犯として戦争責任を追及されたが、今、思うに、東京裁判の被告席に座るべき真の戦争犯罪人は、スターリンでなければならない。然るに、このスターリンの部下が、東京裁判の検事となり、判事をつとめたのだから、まことに茶番というほかない。

 

以上、ご覧になってどうでしょうか。

あまりにも情緒的でお人よしな日本の姿が見えてくると思います。

語弊を承知で言いますと、筆者は日本が戦争で敗北し、事実上アメリカの属国と化したことは「まだましだった」と考えています。

日本人は、大きなかじ取りは「お上」に任せ、その方向性の中で「必死に頑張る」ことに長けている民族だと思います。

そしてその「お上」は、アメリカが相応しい。

あの徹底したリアリズムは、日本には決して生まれないものです。

そして今後中国と対峙していくには、この「リアリズム」が必須でしょう。

 

日本の強みは、製造分野において数多くの「ニッチトップ」企業を有していることです。

TSMCアリゾナ工場の件でも分かったように、サプライチェーンの再構築は容易ではありません。

つまり、アメリカにとって日本及び台湾は「絶対に欠かせないピース」なのです。

日本はこの立場を都合よく利用し、安全保障に大いに活用すべきでしょう。