日本の財政赤字が膨らんだ理由

こんばんは!

サイコパスの郵便屋さんです。

 

円安がなかなか止まりませんね。

アメリカの金利上昇が一服しているにも関わらず、ドル円は高止まりを続けています。

要因の一つとして挙げられるのが、日米の金融政策の違いです。

QTによってドルの回収へと動くアメリカに対し、緩和継続で円のベースマネー供給を続ける日本。

これについて三菱氏は、積み上がった債務残高に起因する「日銀の債務超過」「利払い費増加」への懸念が存在するのでは、という指摘もされています。

円安加速で私たちが考えたいこと

 

そもそも、なぜ日本の財政赤字がここまで膨らんだのでしょうか。

大きな原因としては、やはり少子高齢化が挙げられます。

・高齢者増による社会保障給付費の増加

・生産年齢人口減少による保険料収入の停滞(負担率は増加しているにも関わらず!)

ですね。

90年代半ばから、顕著な傾向となっています。

ではここで、日本の普通国債残高の推移を見てみましょう。

90年代後半から、特例国債(赤の部分。所謂赤字国債)が急速に増えていますね。

さて、ここで注目したいのが建設国債残高(青の部分)の推移です。

建設国債とは、公共事業費等の財源確保を目的として発行されるものです。

特例国債よりも一足早く増え始め、特に90年代から00年代にかけて大きく増えています。

今日はこれについて考えてみましょう。

既得権で雁字搦めになる日本


筆者は郵便屋さんですが、普段仕事をする中で

これ、ムダなんじゃね?

と感じることが多々あります。

その一つが「ほとんど郵便が入っていないポストの収集作業」です。

6年間、一通も郵便が入っていなかったポストもあります(笑)

山奥の僻地にあるポストの多くが、そのような現状です。

そんなポストであっても毎日の開函が義務付けられているため、多大な労力をかけて行っています。

ほぼ毎日、くねくねと山道を登りに登った挙句

はい、今日も空っぽね!

で終わります(笑)

そんなポスト、廃止にすればいいんじゃね?

そう思われるでしょう。

しかし、それには大変な困難を伴います。

「既得権」の問題ですね。

一度作られた設置物、制度、システムには必ず既得権が発生します。

ポストに関しても、地域の住民の既得権となっているため、その了解を得る必要があるのです。

これが、相当に面倒なのです。

筆者も以前、効率化のためポストの「開函時間」を変更したことがあったのですが、それだけでも地域の区長や周辺企業への説明で大変な手間が掛かりました。

これが「ポスト廃止」だったら、とてもこんなものでは済まなかったでしょう。

そして何より、そこまで苦労して効率化したところで、我々に待っているのは「人員削減」です(笑)

楽になったんだから人いらねーだろってことです。

つまり、我々の「既得権」も喪失しかねない。

そりゃ、統廃合も進みませんよね。

総務省ホームページより引用

繰り返します。

一度作られた設置物、制度、システムには必ず既得権が発生し、それを整理するには大変な労力がかかる、ということです。

建設国債の推移のとおり、日本においては90年代以降、公共事業により多くの「社会資本整備」が進みました。

それには所謂「箱もの」も多く含まれます。

例えば美術館が一つ作られると「館長」を始めとする「ポスト」も生まれますね。

大事な天下り先です(笑)

従って、赤字になっても整理されることはありません。

地域の文化振興のためです!故郷を見捨てるわけにはいかない!

当然、そうなりますよね(笑)

赤字の郵便局の統廃合が、ほとんど進まないのと同じです。

既得権に縛られ、整理が進まないまま「維持費」だけは掛かり続ける。
それが財政を圧迫し、新たな特例国債が発行されます。

建設→既得権化→維持管理費増大→新たな赤字発生の流れですね。

thinktank.php.co.jp

普通国債の残高推移からは、そんな日本の姿が見えてきます。

公共事業増大のきっかけは何だったのか


票目当ての政治家が、ムダな箱モノを作りまくったせいだろ!

もちろん、そういう側面はあるでしょう。

しかし「最初のきっかけ」としては、また別の側面があります。

当ブログの読者様なら、もうお分かりですよね。

そう、日米構造協議です。

 

yuubinyasan.com

ja.wikipedia.org

80年代後半。

日本経済は、ジャパン・アズ・ナンバーワンの言葉通り破竹の勢いで世界を席巻しました。

日本株時価総額は、米国株のそれを遥かに上回り、東京こそが世界の中心でした。

現在では想像もつきませんが、日本はアメリカの「覇権」に挑んでいたのです。

これに激怒したのがアメリカです。

アメリカの内在的論理は単純で、ズバリ「損得」。

自分たちの覇権を脅かす国を、あらゆる手段でブッ潰す。

それだけですね。

 

当時、アメリカの貿易赤字の大半は対日貿易からもたらされていました。

マクロ経済の恒等式に、

民間(家計と企業)貯蓄=財政赤字+貿易黒字

があります。

「民間の資金余剰」は「財政赤字の穴埋め」と「海外の資金不足の穴埋め」に使われるということですね。

アメリカは日本の貿易黒字を破壊するため、この恒等式に基づいて

財政赤字の拡大

・民間貯蓄の削減(消費者金融の活用を促す)

・労働時間の削減(レジャー時間の増大、輸出企業の競争力減退)

を要求しました。

特に重視されたのが「財政赤字の拡大」です。

投資資金を「生産と関係がない公共投資」へと向かわせ、輸出企業の競争力を阻害せよ、という事です。

これを受け、日本政府は総額430兆円(後に200兆円追加され、総額630兆円)にも上る公共投資計画を策定。

相当の額が、「ムダ」な公共投資となったとされます。

この投資行動が箱物行政を生み出し、現在の日本の財政難の遠因であるとの指摘がある。具体例としては、運輸省がこれ以上の地方空港は不要とする航空会社の意見を無視して、事業費消化のために「総滑走路延長指標」を用いて、日本の空港を乱立させたことが挙げられる。

wikipediaより引用

そして、いかにムダであろうと、一度作られたモノには「既得権」が発生します。

それは「維持管理費」というランニングコストで、日本の財政を末永く蝕むことになるでしょう。

これが、日本における公共事業費増大の大きなきっかけとなったのです。

アメリカの要求はさらに続く


さて、日本の輸出産業の中でアメリカが特に危険視したのが半導体です。

半導体は防衛産業にも幅広く使用されるため、日本企業が半導体市場を席巻することは「安全保障上の問題」とされたのです。

・日本市場における外国製半導体シェアを5年以内に20%以上にすること。

・日本企業は自社製品の価格設定をしてはならない。アメリカ政府が設定する。

86年、このような内容の日米半導体協定が結ばれました。

www.fn-group.jp

このとりきめによって、米国や韓国のメーカーは日本のものより少し安い値段を付ければ簡単にシェアを獲得できることになる。

2つ目は、日本の半導体市場での外国メーカーのシェアを10%から20%に拡大する取り決めだ。

当時の日本には家電製品向けを中心に巨大な半導体マーケットがあったが、日本の半導体メーカーが圧倒的なシェアを保持しており、外国メーカーは10%ほどしかシェアを持っていなかったのだ

明らかに不平等な協定だが、当時の米国と日本の国力の差では、このような理不尽な要求をされてもそれをはねのける力がなかった。

同時期に韓国メーカーがDRAMの生産開発を始めていたが、韓国メーカーはDRAMを日本に持っていけば、外国製半導体を購入するノルマで容易に販売できるため、まさに漁夫の利と呼べる状況だった。

さらに85年のプラザ合意によって、円高への誘導が決定。

僅か1日でドル円は20円もの円高、その後約1年でドルの価値は半額まで下落しました。

wikipediaより引用

日米構造協議、日米半導体協定、プラザ合意

何が何でも、あらゆる手段を用いて日本の輸出産業を破壊する。

アメリカの強い意志が感じられますね。

事実、日本の投資資金は内需へと向かい、バブル経済を形成。

やがてこれが崩壊することで、「失われた20年」へと向かう事になります。

それでも、アメリカは信頼できる

さて、ここまで読んでどのような感想を持たれたでしょうか。

アメリカはとんでもねえ国だな!

そう思われたでしょうか。

筆者はそうは思いません。

むしろ、アメリカほど信頼できる国はないと考えています。

なぜならば、徹底して「損得」で動くからです。

そして損得で動く国は、予想しやすいのです。

これが現在のロシアのように、損得ではなく「大儀」で動く国(独裁国に多い)だとどうでしょうか。

内在的論理が読めませんよね。

全く信頼できないのです。

従って、筆者は中国株等には一切投資していません。

まあソフトバンクGを通じては行っていますが^^;

そういう意味で、アメリカは信頼できますね。

自分たちの覇権を脅かすヤツをぶっ潰す。これだけです。

そして、今その矛先が向かっているのが中国ですね。

80年代の日本に対しての動きと、うり二つでしょう。

従って、筆者は今後の日本株(特に半導体・電子部品関連)には強気です。

なぜならば、日本の半導体産業がアメリカにとって利用価値があるからです。

もちろん、短中期的には景気変動の影響が大きいでしょうが。

アメリカにとって都合が良い国」になること。

これが日本にとっての生命線です。