こんばんは!
サイコパスの郵便屋さんです。
円安が急速に進んでいます。
現在のドル円は、118円ちょうど。
2015年6月に、日銀の黒田総裁が円安をけん制したのが125円の時でした。
いわゆる「黒田ライン」ですね。
日銀の「円安防衛ライン」とも言えます。
しかし、物価変動を考慮した実質実効レートでは、
2015年6月 67.63
2022年1月 67.55
と、すでに黒田ラインを割り込むに至っています。
実に50年ぶりの円安水準まで低下したことになります。
日本経済新聞(2022年2月17日)より引用
原油を始めとするコモディティ価格は、ウクライナ戦争やグリーンインフレーションの影響で記録的な高値をつけています。
これに円安が加わることで、日本の貿易収支は大幅な悪化が見込まれます。
事実、1月の貿易収支は1兆6,000億円もの赤字でした。
本来であれば、円安であればインバウンドを通じて旅行収支が改善し、経常収支を押し上げるのですが、コロナ禍によってそれも望めません。
これはもはや「悪い円安」といってもよいのではないでしょうか。
日銀もFRBやECBと歩調を合わせ、利上げによって通貨を防衛するべきではないでしょうか。
コロナ対策で短期国債が激増→財政は金利上昇に脆弱化
コロナ対策の補正予算等もあり、国債の発行額はここ数年で激増しています。
2020年度 約263兆円
2021年度 約236兆円
いずれも、新規国債発行額に借換債発行額(償還を迎えた国債を借り換えるために発行)を加えた額です。
問題は、その内訳です。
償還期限が1年以内の短期債(緑の部分)が激増しているのです。
当然、翌年に償還を迎えた短期債の償還金は、借換債を発行して調達されます。
この時、金利が上がっていれば、当然利払い費は増加することになる。
財務省ホームページより引用
金利が2%上昇した場合、3年後の利払い費は実に7.5兆円も増加することになります。
税収が約60兆円ですので、その影響の大きさが分かりますよね。
コロナ禍を経て、日本の財政は金利上昇に極めて脆弱な構造に変化しているのです。
政府としては、短期債が減少(借換債も含め)するまでは、とても利上げは容認できないでしょう。
海外保有率が高い短期国債
財務省ホームページより引用
財務省ホームページ内、令和2年度の債務管理政策「保有層の多様化」によると、短期国債(国庫短期証券)の保有は、海外が約7割を占めています。
海外投資家は、都合が悪くなると(利上げの兆候等)、容赦なく投げ売りしてくるでしょう。
国債市場が不安定化する恐れが高い。
売買シェアでみると、海外投資家の割合は
現物で約39%
先物で約60%
に達しているのが分かります。
国債全体に占める海外投資家のシェアは約13%に過ぎませんが、実際の市場売買においては非常に大きな存在になっていることが分かります。
なぜ、短期国債に頼ったのか
これについては、慶應義塾大学の土居 丈朗教授が、週刊東洋経済に書かれています。
新型コロナの前の国債発行総額に相当する額を、今や2年以下の満期でしか借りられないという状況に置かれているのだ。
(中略)
もし市場のニーズがなければ、長い満期の国債で借り換えることができない。日本の財政は、まさに自転車操業状態である。
金利はほぼゼロなので、今のうちに50年債や100年債、永久債(満期のない国債)を大量発行すればいいという主張もあるが、それどころではないのが実情だ。
日本政府といえども、民間金融機関のニーズを聞かずに強引に長い満期の国債を発行できない。
50年後や100年後の日本の財政や経済の状況がどうなるかわからないのに、そんな長い満期の国債を多く買う民間金融機関はほぼ存在しない。
現状でも長い満期の国債は自由自在に出せず、30年債と40年債を合わせた構成比は10%未満にとどまる。
これが本当ならば、日本の財政は、僕たちが想像する以上に危険な状態にあるのかもしれません。
MMTどころではないですね。
まあ週刊東洋経済は、普段からなかなか煽情的な記事を出しますので、これもそっち寄りなのかもしれません。
しかし、政府日銀がそう容易に利上げに踏み切れるような財政状態でないことは事実です。
つまり、日銀としては「悪い円安」に打つ手がない。
いや、そもそも「悪い円安」とは認めないでしょう。
最も、現在の急激な円安については、筆者としても少々「行き過ぎ」のような気がしてます。
経常収支悪化→円安の流れが、あまりにストーリーとして分かり易過ぎる。
為替って、そんな単純な因果で説明できるもんじゃないと思うのですが、どうでしょう。