年賀状ビジネスは、なぜ儲かるのか

こんばんは!サイコパスの郵便屋さんです。

 

郵便局では、今日から年賀ハガキの区分、道順組立作業が始まりました。

従って、筆者は今日から9連勤です( ;  ; )

ブログの更新も滞ると思われますが、極力頑張って書きますので、よろしくお願いします。

 

さて、その年賀ハガキなのですが、今年の当初発行枚数は約18億2536万枚、対前年6%の減少らしいです。

ここ数年は、減少傾向に拍車がかかってますね。寂しいものです。

 

かつて、筆者が郵便局に入ったばかりの頃は、年賀といえば「」でした。

今と違って、2パス区分機(郵便を配達順路に並べる機械)などありませんでしたからね。

朝から晩まで、ひたすら手区分ですよ。

通常郵便の配達は男子高校生に、道順組立は(主に)女子高生に任せてね。

 

女子高生にウケようと、お菓子いっぱい買ってくる奴とかいましたね。

うちの班では、担当の女子高生と結婚しちゃった人もいます。いや、もちろん卒業後ですよw

 

さて、この年賀ハガキなのですが、このビジネス、うちの会社にとってはドル箱でした。

毎年、決算は上半期が赤字で、下半期に一気に通年黒字まで盛り返すのが常だったんです。

まさにこの「年賀状ビジネス」さまさまですね。

 

では、なぜこの年賀状ビジネスは儲かっていたんでしょうか。

今日は、そのお話をさせていただきます。

理由は大きく分けて2つあります。

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理由①アマゾンプライムが儲かる理由と同じだから

はい、チコちゃん風にしてみましたw

アナロジーってやつですね。

 

まず、普段の郵便配達を見てみます。

僕達は平常、一人平均1000通弱の郵便を配達しています。

この「費用」の構造はどうなってるか。

あ、ここでの「費用」は、「投入労働時間(工数)」で考えます。

 

費用は「固定費」と「変動費」に原価分解できます。

○業務量に関わらず、必ずかかるのが固定費。

○業務量に応じて、逓増していくのが変動費です。

変動費」は、「業務量」という独立変数に対する従属変数ってことですね。

 

具体的に見ていきましょう。

○固定費

 ・ミーティング

 ・点呼

 ・日常点検

 ・局から配達開始地点及び終了地点までの往復

変動費

 ・道順組立時間

 ・配達箇所から次の配達箇所へのバイク移動

 ・バイクを降りてから、ポストまでの歩行

 

大体こんな感じですかね。

では次に、これを費用曲線のグラフにしてみましょう。

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まず、業務量ゼロの時でも固定費は掛かりますよね。

これに、業務量に応じて変動費が乗っかっていくイメージです。

 

さて、この「変動費」の伸びは一定ではありません

業務量がある点まで達すると、線の傾きが緩やかになっていきます。

 

これは、「同じ個所に、複数の郵便を配達」する機会が増えていくからです。

「同じ箇所への2通目以降の郵便」については、「次の家から次の家までの移動時間」「バイクから降りてポストまでの歩行時間」が、ゼロですよね。

 

そして、業務量が増えるにつれ、この「同じ個所に複数の郵便」を配達する機会が増えていきます。

「業務量が1単位増えた場合の追加的費用」=限界費用が、次第に低下していくってことですね。

 

しかし、業務量がさらに増えてくると、再びグラフの傾きが急になる=限界費用が急増します。

これは、「バイクに積み切れず、局まで取りに戻る」費用が掛かるからです。

 

以上が、普段の郵便配達における「費用」の構造です。

これを見ると、「なぜ年賀状配達が儲かるか」はすぐわかりますね。

 

年賀状は、「同じ家に数十枚~数百枚」単位でまとめて配達しますよね。

さらに年賀状は「極めて薄く、小さく、軽い」ため、一回でバイクに積み込める量もすごく多い。

 

従って、グラフの「限界費用がほとんど伸びない」部分が非常に長ーいってことです。

だから、年賀状は儲かるんですね。

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実はこれ、「アマゾンプライム」の費用構造に似てるんです。

 

サービスを開始して、「最初のお客さん」にかかる費用は膨大です。

サーバーの設置や、映画・音楽の権利獲得費等ですね。

 

しかし、「二人目以降のお客さん」への限界費用は、ほぼゼロです。

サーバーがパンクしない限りは。

 

だから、初期費用と固定費を賄った以降は、「売上総利益率」は100%ちかいってことです。ウハウハです。

 

ちなみに、「なぜ普段の郵便配達が儲からないか」もわかりますね。

ネット通販の発達等で、「大型郵便」が増え、一回で積める郵便量がどんどん減っていくからです。

つまり、グラフの「傾きが緩やかな部分」がどんどん短くなってるんです。

 

加えて、核家族化の進展で、「配達個所数の増加」「1か所当たりの配達量減少」により、限界費用が減りにくくなっていることもあります。

 

理由②閑散期に仕事ができるから

12月も中旬を過ぎると、郵便の量はどんどん減っていきます。

企業が「仕事納め」をするからですね。

これは、1月中旬まで続きます。

つまり、年賀状配達がなければ「仕事がほとんどない」状態が1か月近く続くことになります。

 

僕らは、「労働時間」にたいして給料をもらってます。

「時給制」「月給制」の違いはあれど、そこは変わりません。

「業務量」に応じているわけではない。

 

つまり、費用のうち「固定費」が占める部分が非常にでっかいわけです。

ここは、業務量(売上)が増えようが減ろうが一定なので、閑散期は大赤字になっちゃうんですね。

 

ここを、うまーくカバーしてくれるのが「年賀状配達」なんです。

 

逆に「普段の郵便事業がなぜ儲からないか」も、やはりここから分かります。

郵便の量は、日々の変動が激しいです。

投資用語でいうと「ボラティリティが高い=ハイリスク」だということ。

 

この「変動率が高い業務量」と「高い固定比率」という

「最悪のコンビネーション」

になってるのが、郵便事業なのです。

 

会社はこの問題に対処するため、P-DX(ポスタルデジタルトランスフォーメーション)つまり、デジタル化による事業効率化に乗り出しています。

 

筆者も詳しくは知りませんが、おそらく「郵便物のデジタル通貨化」をしてくるんじゃないでしょうか。

郵便物一つ一つに「背番号」を付け、差出から到着までの流れをデジタルに可視化することで、翌日業務量の把握をしていく、と。

 

しかし、ここで問題になるのが「労働法制」です。

 

郵便事業は「4週単位の変形労働時間制」をとっています。

これにより、本来「週40時間」を超えた部分に掛かってくる残業代支払いは免除されています。

 

しかし、これには条件があって、「あらかじめ、4週単位で勤務シフトを指定し、かつ会社都合で途中で変更してはならない」のです。

 

直前になって「明日休め」「明日の休みを飛ばせ」では、労働者のプライベートが棄損されるからです。

 

従って、もし翌日の業務量が予測できたとしても、それに応じて配置工数を増減できないことになります。

 

この点はどう考えているんでしょうかね。

まあ、お手並み拝見です。